遺言無効と認知症の基礎知識
認知症の基礎知識
認知症とは、生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することにより、日常生活・社会生活を営めなくなる状態をいいます。
認知症の症状は、中核症状と周辺症状に分けられます。
中核症状とは、脳の細胞が壊れることによって直接生じる症状です。具体的には、(1)記憶障害、(2)見当識障害、(3)失語・言語障害、(4)失行、(5)失認、(6)実行機能障害(判断能力の障害)があります(詳細は、ウをご覧ください)。これら中核症状は、認知症の重症度を判定する目安になります。
周辺症状とは、中核症状に性格・素質、環境・心理状態等が加わった結果引き起こされる具体的な生活障害です。
認知機能障害と遺言の有効性の関係
認知症は、上記のように様々な症状が発生しますが、認知症の中核症状は、大まかに言うと、記憶力・理解力・判断力という精神的機能が障害される「記憶障害、見当識障害、失語・言語障害、失認、実行機能障害」と精神的な機能が障害された結果身体的な機能が損なわれる「失行」に分類することが可能です。
他方、自筆証書遺言と公正証書遺言の要件は、精神的機能の障害が問題になるもの、身体的な機能と精神的な機能の両方が問題になるものがあります。
そこで、認知症に関して遺言の有効性を検討する場合は、認知症の中核症状と自筆証書遺言・公正証書遺言の要件がどのように結びつくかを整理することが有用だと思います。以下に、認知症の中核症状と自筆証書遺言・公正証書遺言の要件の関係を整理した表を示しますので参考にしてください(なお、以下の表は、思考の整理のために一般的な枠組みを示すものであることにご注意ください)。