ごあいさつ
この遺言が父の意思だとはどうしても思えなかったんです。
この言葉は、私が初めて受任した遺言無効確認請求訴訟の依頼者の方の言葉です。
この依頼者の方は、故人とは親子でした。
故人は妻に先立たれ、徐々に病気がちになってきました。そんな時にも依頼者の方は、故人の入院や要介護認定の手続をするときはその一切の手続をし、保証人にもなって故人を支えました。
その後、故人の認知症が進み、周りの人間が誰であるか分からない程に悪化し、認知症専門病院に転院しましたが、この際、依頼者は仕事の都合で、従兄弟の女性に一時的に故人の面倒を見てくれるように頼みました。
5ヶ月後、故人がなくなりました。依頼者の方は、葬儀の席上で全ての遺産を最後に面倒を看た従兄弟の女性に相続させる、との遺言があることを知りました。
このような事情で依頼者の方は、当事務所にご相談にお越しになりました。
自分に不利益な遺言が存在する事案では、相続分が減ることに対する不満があることも勿論だと思われますが、相談者の方の多くが仰るのは、自分の相続分がない(又は少ない)ことにより、自分と被相続人との生前の人間関係が否定されたような気持ちになること、自分が他の相続人よりも重視されていないと感じるということです。
相続とは、法律的には、相続人間で遺産の取得方法・割合を具体的に決定する財産に関する手続であり、相続人の感情や家族関係を考慮する手続ではあまりません。したがって、いくら遺言の内容がおかしいといっても心情的な面は別としても、法律的には遺留分を請求しましょう、という提案が精一杯です。
しかし、近年は、高齢化と共に認知症等に罹患して、必ずしも判断能力が十分でない高齢者の方が多く見受けられるようになってきました。そして、相続トラブルを扱う弁護士として、実務の現場にいると、このように判断能力が低下している方に働きかけることで、自分に有利な遺言を作成させることも多く見受けられるようになってきていると強く感じます。
このようなことがまかり通れば、故人の意思を実現するという遺言制度の目的に反しますし、残された相続人(多くの場合は家族)にとっても非常に辛い思いをすることになります。
そこで、相続問題を中心的に取り扱う弁護士として、不当な遺言で悩む方の力になりたいと思い、遺言無効.comを開設しました。
不当な遺言に悩まれている方は、何時でもお気軽に、遺言無効.comにご相談ください。
弁護士 小池智康