1.プロローグ
平成26年2月11日、父が87歳で亡くなった。10年前に母が亡くなったあと、父は自宅で一人暮らしをしていたが、6年前に認知症と診断された。幸い認知症の初期であり、一人暮らしが可能だったことに加え、父が自宅での生活を望んだことから、訪問介護サービスを利用して生活をしていた。長男である私は、既に結婚して家庭を持っており、実家で父と同居することは難しかったため同居することはせず、時間の許す限り実家の父のもとを訪れるようにしていた。私は2人兄弟で妹がいるが、妹も結婚して家庭があるため、私同様父と同居はせず、また遠方に住んでいたこともあり殆ど父のもとを訪れることはなかった。
2年程前、父は認知症が悪化したため施設に入所し、途中施設を移動したが、その施設で亡くなった。
父の四十九日が終わった数日後、妹から郵便物が送られてきた。あけてみると、遺言書と書かれた書類が入っていた。遺言書には、「私の全財産を面倒をみてくれた娘エリーに相続させる」と書いてあり、父の名前が記載されていた。同封された妹の手紙には、この遺言書を父が作成したこと、父の意思通りに相続を進めたいと書いてあった。